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キンシ正宗は、京の水のやわらかな特色をいかすために麹菌や酵母菌のいとなみを管理し、一年を通じて均一で高品質な酒をつくりだしています。
ここでは、キンシ正宗の酒造りの工程をご紹介します。

米の表面や胚芽には、タンパク質、脂質、灰分、ビタミンなどが多く含まれており、これらは麹菌や酵母の生育を急進させ、酒質の調和を乱し、雑味成分などの原因となります。これらを取り除く目的で精米は行われます。 蔵人は精米の事を「米を磨く」と表現します。普段、皆様も食べているご飯は90%~92%ほど磨かれています。90%ですと「精米歩合90%」と記します。(精米歩合は米を削り取って残った割合です)酒造りに使う米は、キンシ正宗では最低で70%。純米大吟醸の場合は35%まで磨きます。

洗米とは文字通り米を洗う工程です。精米された米には糠やゴミなどが付着しています。これらを洗い流す工程です。
浸漬(しんせき)は米に水分を吸水させる工程です。しかし、ただ吸わせれば良いというものではなく、使用する目的ごとに吸水率が異なります。キンシ正宗の場合、麹用で132%~134%、掛用で125%~130%の目標値で行っています。難しいのが、同じ種類の米であっても、年度や産地が違うと吸水率は異なります。また、その日の気温や湿度でも変化します。この数字を一定にするのはとても難しいのですが、ここでしっかりと目標値にしておかないと、後々の工程すべてに響いてくるとても重要な工程です。
キンシ正宗では、大型仕込みで造る酒は機械を使用した洗米を行います。しかし、本醸造を除いた特定名称酒の分はすべて手洗で行い、造りもすべてを手造りで行っています。

〈手洗い方法〉

ステンレス製のザルに決まった量を測ります。これを水温10℃の水の中に浸け、約1分間洗います。洗い終わると一度引き上げ、水をかけて余分な糠を洗い流します。その後、再び10℃の水に浸けます。浸ける時間は、米の種類や精米歩合、何に使用するのか、その日の気温や湿度などで変わります。35%などの高精白の米は吸水が非常に速いので、秒単位の調整が必要となります。

洗米・浸漬を経た米は一晩静置します。翌朝、甑(こしき)という専用の道具に入れて蒸気で蒸し上げる工程です。甑の下部に水が張れるようになっていて、そこに蒸気を送り込み、水を沸騰させ、その蒸気で蒸します。ご家庭の蒸し器と原理は一緒です。日本酒造りに使用する米は通常であれば蒸します。ご飯として普段食べているものは炊いていますよね?

ではなぜ蒸すのかと言うと、蒸し上がりの米の状態を外硬内軟(がいこうないなん)と呼ばれる状態にするためです。これは昔から外硬内軟が良いと言われています。読んで字のごとくで、米粒の外側は硬く、内側は軟らかい状態です。日本酒造りでは醪を長期間低温で醗酵させます。蒸米が軟らかいと醪にしたときに、すぐに米が溶けてしまいます。すなわち、醗酵が早く進んでしまうのです。また、蒸米が軟らかいと、麹菌が米の表面にしか繁殖せず、ベタベタの麹になってしまいます。このような麹は十分な力を発揮しません。
また、内側に芯が残っていると、米で一番良質のデンプン質を含んだ部分が糖化、醗酵しない恐れもあるのです。

尚、余談ではありますが、蔵人の言葉に甑倒し(こしきだおし)という言葉があります。これはその年のすべての蒸しが終わりをむかえる日の事なのですが、単に蒸しが終わるという意味以上に、気の抜けない酒造りの季節が終わり、ほっと一息つく日の到来を意味します。

通常、アルコール醗酵は酵母と糖分があれば行われます。同じ醸造酒であるワインを例にしますと、ワインの原料であるブドウは糖分(果糖)をたくさん含んでいます。ここに酵母を与えてやれば醗酵します。ですが、日本酒の原料である米には糖分はほとんど含まれていません。ここで必要になるのが麹です。

ご飯を口の中で噛んでいると甘くなってくると思います。これは唾液中の酵素がご飯のデンプンを糖に変化させているからです。麹の役割はまさにこれで、麹の酵素が米のデンプンを糖分に変化させるのです。これで糖分が出来上がったので、酵母を与えてやると醗酵します。醪の中で、麹の酵素がデンプンを糖分に変え、酵母が糖分をアルコールに変える。この二つの作業が同時に行われています。これを並行複醗酵と言います。この醗酵方法で造るからこそ、日本酒は醸造酒の中では世界に類を見ないほどの高濃度のアルコールを生成するのです。

通常、酒蔵には室(むろ)と呼ばれる麹造り専用の部屋があります。床暖房やパネルヒーターなどで部屋の温度は30℃以上に、湿度は40%以下に保たれています。人間には辛い環境ですが、麹の育成にはこの条件が必要となるのです。また、雑菌などを部屋に入れないように細心の注意を払います。基本的に、関係者以外は入れません。

麹造りには様々な方法があります。キンシ正宗では、大型仕込みで使用する分は機械で麹を造ります。しかし、本醸造を除いた特定名称酒の分はすべて手造りです。麹を手造りするというのはとても大変な作業です。しかし、すべては良い酒を造るためです。その為の手間は惜しみません。

手造りで麹を造るときは二通りの方法で行います。一つは35%の純米大吟醸を造るときの「蓋麹法」。その他の精白では「箱麹法」で行います。
「蓋麹法」「箱麹法」の説明は下記でご説明いたします。

床もみ

蒸しあがった蒸米を自然放冷し、約40℃まで冷まし、室に引き込みます。引き込んだ後、一塊にして布で覆います。引き込んだときは蒸米の温度にバラつきがあるため、全体を馴染ませるためです。

引き込み後2~3時間し、温度が全体的に馴染んだ頃、種付けとか床もみと呼ばれる作業をします。これは、蒸米に種麹についた麹菌を振りかけていく作業です。種麹を蔵人は「もやし」と呼びます。もやしを小さなふるいで振り、麹菌だけを蒸米に振りかけていきます。

もやしを振りかけたのち、目標の温度まで下げると、再び一塊にして布で覆います。そして翌朝まで静置します。

盛り

翌日早朝、布で覆われた蒸米の一粒一粒に白い斑点が見えだします。麹菌が繁殖を始めた証拠です。ですが、このままの状態にしておくと、塊の外と内ですごい温度差が生じます。また、乾燥具合も全然違ってきてしまいます。そこで小さな大きさに小分けしてやります。これを「盛り」といいます。

箱を使う場合は、一枚当たり12~13㎏ぐらいに分けます。この先は麹菌の繁殖と、麹の乾燥が目的となります。布で覆い、温度と乾燥の管理をしていきます。
盛り後3~4時間すると上下の箱で温度差が出始めます。基本的には上に置く箱の方が温度の上昇が早いです。この温度差を無くす為に、上下の箱を入れ替えます。「積み替え」という作業です。

仲仕事

積み替え後2時間ほどすると温度が約36℃付近まで上昇します。ここで「仲仕事」という作業を行います。これは、手を入れて麹を撹拌し、温度ムラをなくすのと、麹に酸素を供給するために行います。

仕舞仕事

仲仕事後、再び温度差が出始めるので、積み替えを行い、約40℃付近まで温度が上がってきます。このぐらいの温度まで上がってくると、麹の発熱はどんどん進むようになります。ただ、温度が上がりすぎても具合がよくないので、「仕舞仕事」という作業を行います。この作業で麹を薄く伸ばし、麹の発熱を抑えにかかります。

最高積み替え

これで終わりならそれほど辛くはないのですが、麹造りはまだまだ終わりません。仕舞仕事後5~6時間すると温度が42~43℃ぐらいまで上昇します。ここからが肝心で、この温度を翌日の出麹と呼ばれる、つまり麹が完成するまでキープするのがとても大事なのです。ここで行うのが「最高積み替え」です。積み替えを行い、操作してやることでこの温度をキープします。しかし何が辛いってこれを行う時間です。麹の種類によっても変わってきますが、大体、23:00~翌日1:00ぐらいの作業になります。遅いときは3:00ごろとかになったりもします。手造りで行う以上、人間が操作するしかありません。麹を造るときは必ずこの作業があります。また、翌朝5~6時間後には再び積み替えを行います。麹造りが連続すると、睡眠不足との闘いになります。とても辛いですが、絶対に手を抜けない大事な部分になります。
何回かの積み替えを経て、トータルの時間が50時間を過ぎてくるころに麹から栗のような香りが出てきます。栗香と言い、この香りが出ることが良い麹の絶対条件です。栗香が出て、杜氏が良しと判断するとようやく麹は完成です。出麹と言う作業を行い、麹の成長をここで止めてやるために、室から出して冷却します。一晩静置し、翌日の仕込みに備えます。

蓋麹法について説明します。基本は箱麹法と一緒なのですが、箱の代わりに「麹蓋」と呼ばれる道具を使用します。

1枚当たり、約2㎏ほどに分けます。これも行うのは積み替えや仲仕事、仕舞仕事なので基本は一緒なのですが、枚数が多いため、麹蓋の上下での温度差がとても大きくなります。そこで頻繁に積み替えを行う必要があります。箱麹法の場合、最高積み替えで1回、翌朝に1回、出麹までに1回ぐらいなのですが、蓋麹法では最高積み替え後に2~3時間おきに行います。もちろん夜の間も。と言うことは、蓋麹法で造る場合は蔵に泊りになります。

夜中に何回も起きてきて世話をします。とても大変な作業となります。ではなぜこのような大変な作業を行うのか?すべてを箱で行っても良いのでは?となるかもしれません。とても簡潔に言いますと、麹蓋で造る麹が一番良いものになると考えているからです。麹蓋で造る麹は、乾燥も良く、非常に優れた麹となります。しかし、反面、蓋麹法は操作がとても難しく、最も経験を必要とします。出麹を迎えるその時まで、物凄く神経を使います。麹蓋での麹造りが連続するときは、体力的にも精神的にも物凄く辛いです。しかし、本当はこんなことは言ってはいけないのでしょうが、杜氏にとって、35%精米の純米大吟醸はやはり特別なものです。それだけにこだわりを持って仕事をしているのです

酒質の要

キンシ正宗の杜氏は、「麹の出来の良し悪しで、酒質の8割~9割が決まる」と考えています。(あくまでもキンシ正宗の場合です。杜氏全員の意見ではありません。)とは言え、良い麹が出来たからと言って、かならず良い酒になるわけでもありません。でもそれこそが酒造りの難しいところでもあり、おもしろくもあるところなのです。

酵母には糖分をアルコールに変える働き、すなわち醗酵作用がありますが、酒蔵で扱うような大量の米を醗酵させる為には、微生物である酵母が1匹や2匹では全く不十分です。米の量に見合っただけの、何百億、何千億匹もの酵母が必要になります。酵母を純粋に培養したものを酒母と言います。ちなみに、蔵人は酒母のことを酛(もと)と呼びます。

酛は大きく分けると3つのタイプに分かれます。昔ながらの製法で造る「生酛」(きもと)と呼ばれるもの。生酛の生成過程から山卸しと言う工程を省いた「山廃酛」(やまはいもと)と呼ばれるもの。そして現在主流になっている「速譲酛」(そくじょうもと)の3タイプです。

酛造りの際には、タンクが開け放しの状態となるため、空気中からたくさんの雑菌や野生酵母が入り込んできます。生酛と山廃酛は自然の乳酸醗酵で乳酸を生成し、これらを死滅させ駆逐します。また、色々な微生物が速譲酛に比べると含まれているので、濃厚な味わいと酸味を造りだすのが特徴です。そして育成期間が約1ヶ月ほどかかります。

対して速譲酛はあらかじめ生成された乳酸を人工的に添加します。そうすることにより、酵母以外の微生物が働く必要がなくなり、より純粋に、より安全に酵母を培養できます。また、育成期間も11日ほどで完成となります。キンシ正宗では速譲酛で仕込みを行っています。

醪(もろみ)とは、仕込みに用いるタンクの中で、麹、酒母、蒸米、水が一つになったものです。
酒蔵では、醪、仕込み、造りはほぼ同意として扱われます。蔵人は仕込みや造りといった言葉をよく使います。酒造りには、「一 麹、 二 酛、 三 造り」という言葉があります。これは酒造りにおける重要度を示す言葉なのですが、この造りは醪を造る工程を指しています。
醪造りの最大の特徴が三段仕込みという方法です。前もって造っておいた、麹、酒母に加え、蒸米と水を3回に分けて、だんだんと量を増やしながら仕込んでいきます。これにはもちろん理由があって、醪は酒母同様、開放状態で仕込まれ醗酵していきます。これは常に空気中の雑菌や野生酵母による汚染の危機にさらされています。1度に全量を仕込んでしまうと、せっかく酒母で増やした酵母の濃度が薄まり、酸度も下がり、雑菌や野生酵母の繁殖を許してしまいます。それを防ぐために、仕込みを3回に分け、酵母の繁殖を促し、待ちながら仕込んでいくことで、常に酵母の数が優勢となり、雑菌や野生酵母の繁殖を抑えているのです。

1日目は初添え(はつぞえ)と言います。酒母に麹と水と蒸米を加えていきます。蔵人は仕込みに使う蒸米を掛米と呼びます。蒸し上げた掛米を自然放冷で目的の温度まで下げ、温度管理をしながら仕込んでいきます。
2日目は踊りと言って仕込みを一旦休ませます。休みを入れることにより、酵母の繁殖を促します。
3日目は仲添え(なかぞえ)と言って、大体ですが、初添えの倍の量を仕込みます。また、温度を下げて、雑菌の増殖を防ぎます。
4日目は留添え(とめぞえ)と呼ばれます。これまた大体ではありますが、仲添えの倍の量を仕込みます。初添えの約4倍量となります。ですので、比率は1:2:4となり、倍々に仕込んでいくということになります。温度はさらに下げていきます。ちなみにですが、蔵人は初添え、仲添え、留添えとはあまり言いません。添え、仲、留と略して言うのが一般的です。
こうして、4日間かけて3回の仕込みを行い、仕込みは完了です。ここからは低温で醗酵管理をしていきます。仕込む酒の種類で変わりますが、20日~35日ぐらいかけて、ゆっくりと醗酵させ、熟成すればいよいよ搾りとなります。

毎日の分析や、醪の状態を見て、杜氏が「熟成した」と判断された醪を、溶けきっていない白米や麹などの固形分と、液体分とに分ける工程を上槽(じょうそう)と言います。蔵人は搾りと言うことが多いです。液体分が原酒、固形分が酒粕です。
搾りにも様々な方法がありますが、現在主流となっているのは「自動醪圧搾機」と呼ばれる機械で搾る方法です。キンシ正宗でも大半の醪はこの機械で搾ります。
しかしながら、純米大吟醸などの特別な酒や生原酒などに使う予定の分などは別の方法で搾ります。これも様々な方法があるのですが、キンシ正宗では「袋吊り」と呼ばれる方法で搾ります。これは醪を入れた袋状の布を吊り下げ、重力によって搾る方法です。機械で搾ると、圧力がかかります。するとどうしても雑味の部分も出てきてしまいます。対して袋吊りは、重力のみで滴る方法なので余計な圧力がかかりません。よって、雑味の少ない綺麗な酒が搾れます。いわゆる、雫酒と呼ばれるものです。ですが、この方法は大変な手間と労力を必要としますので、やはり特別な酒にしか行われないのが一般的です。